冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
残された時間――駆side
秒針の音が頭に響く。
眠りが浅かったせいで、あっという間に目が冴えてしまう。
眠ろうと思えば思うほど焦る気持ちが増幅する。気持ちを落ち着けるためにふぅと大きく深呼吸した。
(安奈はもう眠っているだろうか)
テーブルの上に置かれた紙袋が視界に飛び込んでくる。
昨晩、無理やり安奈に突き付けられたもので、好奇心に負け結局ベッドに入る前に中を確認した。
琉球ガラスの店の段ボール箱に、グラスがふたつ梱包されていた。
それぞれピンクと青で彩られており、淡いグラデーションがビーチを連想させ美しかった。
うぬぼれなのかもしれないが、安奈は俺とお揃いで買ってくれていたのかもしれない。
さらにもうひとつ別のショップの袋も入っており、それは俺が愛用しているネックレスのブランドだった。
ブレスレットと一緒にカードも添えられており、手書きで『駆さんいつもありがとう』と書いてあった。
目の前に置かれているのは物だけじゃない。彼女はこの那覇で俺を想い出してくれていた事実だった。
「はぁ……とりあえず出るか」
この狭い空間にいても気持ちが滅入るだけだと判断した俺は、カードキーを手に扉を開く。
頭の中はいじらしい安奈の姿でいっぱいだった。
(なんであんなことを言ってしまったんだろう)
伊織と安奈が寄り添う姿を見て、激しい嫉妬に駆られた。
挙句、冷静さを失い彼女にひどい言葉を並べてしまったのだ。
今まで積み上げてきた信頼を自らの手で壊した絶望と、強い後悔に打ちひしがれる。
「――あれ、駆?」