冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
私の旦那様
「――ありがとうございました、よい旅を」
午前十一時、那覇空港から羽田空港に到着し、笑顔で乗客を見送る。
最後の一人に手を振り終え、どっと体が重たくなった。
(これから青森か、少し仮眠できるかな)
昨日駆さんと喧嘩し部屋に戻ってからも涙が止まらず、なかなか眠れなかったのであまり体調は優れない。
が、今日はこのままフライトが続くため、気を引き締めていかねば。
再びシップに引き返すため体を反転すると、険しい表情の菅原チーフパーサーが私たちの元へやって来た。
「次の青森便、欠航が決まったわ。今から緊急着陸が行われるから、あなたたちは一度待機よ」
「どういうことですか?」
その場に緊迫した空気が漂い、クルーは固唾を飲んで菅原チーフを見つめる。
何か重大な事態が起きたのか、彼女の顔は真っ白で微かに震えているようだった。
「五十嵐さんが操縦する那覇便で機体トラブルが発生したの。関空着陸の予定が急遽羽田に決まったわ」
「え……?」
「とにかく落ち着いて、荷物を持ち客室センターで指示を待って」