冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「ねぇ、あれじゃないの!?」

近くで聞こえてきた声に、どくっと心臓が締めつけられる。
その場にいたクルーたちが一斉にガラス窓の前に集まるけれど、私はその群れに行けず固まった。
怖くて俯いていると、華奢な腕が伸びてきてそっと手を包み込んでくれる。

「……っ!」

「駆はいつも絶対にやってくれる人よ。信じましょう村瀬さん」

「はい」

視線を上げると涙を浮かべながら菅原チーフが私を見つめていた。
彼女の力強い言葉に、怖気づく心を奮い立たせる。

(駆さんが命を懸けて任務を全うするんだ。見届けなくちゃ)

私と菅原チーフは伊織さんの後をついてゆき、簡易モニターの前で滑走路の状況を確認する。

海側から低空飛行で侵入するピンクのロゴの飛行機を見て、血の気が引いた。

瞬きするのを忘れて、飛行機前方を凝視する。

(あそこに駆さんがいるんだ。頑張れ……!)
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