冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

通常より並行気味に侵入した機体は、後輪から滑走路に降り立つ。
ゆっくりと前方に倒れ前輪がついに接触。激しい摩擦が起きているのか、進行しながら真っ白な煙を上げている。

「速度が一向に下がる気配がない。滑走路の終路まで残りわずかなのに」

伊織さんの焦った声に、思わず拳を握った。汗でぬるついた手のひらで体温が低い。
固唾を飲んでいると、ふいに前輪部分から火花が散った。
冷汗が背中を伝った直後、摩擦を起こしながら烈火を始める。
激しい炎に包まれた前輪はゆっくりと破壊してゆき、完全に滑走路へ吹き飛んだところで機体が停止した。

「きゃぁ！　よかった！」

着陸成功で、歓喜の声が上がったがすぐにその場が静まり返る。
火は前輪があった部分で僅かに燃えており、あのままでは機体に燃え移る心配がある。

すぐに待機していた消防車が水をかけ、鎮火した。

その瞬間、客室センター全体で大きな拍手が巻き起こる。
私もすぐ横にいた菅原チーフとハグを交わしながら、堪えていた涙を流した。
伊織さんも私たちふたりを抱きしめながら静かに泣いていた。

「よかったっ……駆さん……成功してくれましたっ……！」