冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
客室センターを出て、特別に飛行機の停留場に入らせてもらう。
視界の遠くに見える駆さんが操縦した機体では、出入り口に脱出スライドが設置され乗客が脱出している最中だった。
駆さんを始めとするクルーたちが誘導し、数人が担架で運ばれていくのが見える。
「駆さん!」
一緒に歩いていた上層部の許可なく、彼めがけて走り出す。
私の声に気付いた駆さんは、振り返るなり大きな目をさらに見開いた。
「安奈……」
「会いたかった。無事でよかったー!」
躊躇いもなく、彼の体に飛びついた私はめいいっぱい抱きしめる。
体温を感じた瞬間、止まっていたはずの涙が滝のように流れてきた。
私にとって駆さんがかけがえのない存在だということを、身をもって知ったからだ。
するとすぐに、逞しい腕が体に巻き付いてきた。
強く強く強く……私の何倍もの力で駆さんは私を抱きしめた。
「心配させて申し訳なかった。安奈に会いたい一心だった」
耳元で囁かれた切実な言葉に、胸が甘く締め付けられる。
遅れてドクドクと心臓が動き出す。いつもの何倍もの速さで。
「俺は、安奈のことを愛している。本当の夫婦になってほしい」
「駆さん……」