冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

その後、フライト予定だった便がすべて欠航になり私は帰宅。
駆さんは事故の聞き取り調査があり、そのまま会社に残ることになった。

その晩――私は疲れ切った彼をねぎらうために、夜ご飯の支度を完璧に済ませ、お風呂も沸かして帰りを待っていた。
もう夜も深い時間なので、化粧は落としていないが普段通りパジャマ姿だ。

「駆さん大変だなぁ……あんなことがあったのに、帰れないなんて」

ソファに腰かけ壁にかかっている時計の針を見つめながら、ついため息を漏らす。
今日の事故以外でも私と結婚したことがバレたので違う意味でも会社が騒がしく、疲れが倍増だろう。
私自身も他のクルーから駆さんのなれそめだったり、初デートだったり詳細を聞かれたが笑顔でスルーして逃げるように帰って来たのだ。
本当のことなんて口が滑っても言えない。かといって嘘を吐く元気もなかった。

(これからデートとかちゃんと行きたいなっ♡ なんて)

脳内で笑顔の駆さんを再生していると、ガチャッと玄関の方から扉が開く音が聞こえてくる。
その音にハッとした私は笑顔で立ち上がり彼を迎えに行った。

「駆さん、お帰りなさい!」

「あ、ああ……」

(え?)

帰って来た駆さんは私を認識した途端、しどろもどろで頬を赤らめる。

「ちょっと、照れないで下さいよ」
< 131 / 145 >

この作品をシェア

pagetop