冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
聞き捨てならない言葉と一緒に、キスが降ってきた。
「ど、どういうことですか。それ」
「昨日の事故の飛行機で、あの男性が乗っていたんだ」
(えっ……)
駆さんは穏やかな浮かべてわたしの前髪をかき上げる。
「救出活動の時に俺の姿を見て、命を助けてくれてありがとうとお礼を言ってくれた。さらにこの時計も返すと……そして安奈に対しても、謝ってほしいと言っていた」
こんな偶然ってあるのだろうか。
駆さんがこれまで真っ当に生きていたから、再び時計が戻るように神様が仕向けたのかもと思ってしまう。
(なんだか私たち見守られてるな)
温かい気持ちになって微笑んだ直後。
さらに腰を強く抱かれ、深い口づけが落ちてきた。
「んっ……か、駆さん?」
「この時計を売って、安奈と世界一周でもいいな。飛行機のファーストクラスで周るのはどうだ?」
彼は甘い言葉を囁きながら、角度を変えて唇を奪ってくる。
(駆さんと新婚旅行に行きたい)
そう伝えたいけれど、息ができないほどのキスが降ってきてなかなか伝えられない。
「もしくは子供を作って、もっと広い家に引っ越すとか」
「はぁっ……、ん……それも、いいですね」
息絶え絶えになんとか伝えると、駆さんも嬉しそうに微笑んでくれる。
「駆さんと、子供たちと世界中を旅してみたいです」
彼は私の言葉に、ふっと乾いた笑い声を漏らした。
「ああ、どこへでも連れていくよ」
駆さんと過ごす未来を想像すればするほど、胸が弾む。
(でも......このなにげない日常が、一番美しいのは知っている)
背中の後ろで時計を外す気配がしたけれど、私は見て見ぬふりをする。
そして広い背中を抱きしめ、彼とのキスを待ちわびた――。
END.