冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

五十嵐さんの言葉に、思考がフリーズする。
しかし彼が頭を下げたので、すぐに現実に引き戻された。

「この通り、お願いだ」

「は!?」

（KEKKON、けっこん、ケッコン……結婚!?）

こんがらがった頭で逃げ出そうとすると、すぐに五十嵐さんは私の腕を掴む。

「ちょ、ちょっと。離してください！」
「とりあえず話だけでも聞いてくれ。ほら甘いものもあるから」

五十嵐さんは切羽詰まった顔でそう言うと、私を無理やりソファに座らせる。
隣に腰かけた彼はチョコレートの箱を開き、一粒口に押し込んできた。

「いっ、いみがわかりまふぇん」

「三十五を超えて結婚しない俺に、両親が一刻も早く結婚してほしいと望んでいる」

「ふ、ふぁ？」

頭を傾げる私の肩をつかみ、彼は必死な表情で目を大きく見開いた。

「最近はお見合いの話を毎週のように持ってこられ、仕方なく参加したらしたでまったく好意を抱けない相手に激しく求婚をされ、神経がすり減っていくばかりだ。そのうえ婚期に差し掛かったCAやらグランドスタッフからのアプローチも日を増してひどくなっている。だから最適な結婚相手を探していて……」

頭のキャパが超えて、彼の言っている内容が途中から聞こえなくなってくる。
理由はどうであれ、なぜ私が最適な結婚相手になるんだろう。こんなに嫌われているのに。
チョコレートをなんとか飲み込んだ私は、しゃべり続ける五十嵐さんの口を思い切り両手で塞いだ。

「い、五十嵐さんは私のことが大嫌いじゃないですか！　結婚なんて、絶対に絶対に上手くいくわけないですって！」