冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
私、結婚します!
「んっ……」
視界が柔らかい光に包まれている。
混濁した意識が少しずつはっきりしてきて、鳥のさえずりに頬が緩んだ。
(あぁ、よく眠ったなぁ)
上体を起こし、首を動かして周りを見渡す。
だだっ広い芝生のあちこちで、家族や友達が各々ピクニックをしたり、運動したりして楽しんでいるのが見えた。
代々木公園でジョギングした私は、数十分お昼寝をして体を休めていたのだった。
じんわりと額に浮かんだ汗を手の甲で拭う。
(このささやかな日常こそが、この上ない幸せなのですよ)
今週は三日連続の国内線のフライトから帰ってきて本社で事務仕事に勤しんでいたから、足がパンパンにむくんでいた。
走って血流がよくなり、大分体が軽くなっている。
派手に遊べなくても、恋人がいなくても。
憧れていたCAとして働き、休日は気持ちいい風に当たって心を癒して……それで十分だ。
こうした時間を過ごせているのは、決して裕福ではなかったものの、夢を応援してくれた両親のおかげだ。
微力ながらも自分で稼いだお金で、お返しできていることに少しだけ安堵している。
だからいい。五十嵐さんと『契約結婚』なんてしなくたっていい。
「っと。そういえば最近お母さんと話してないな」