冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

気分がよくなった私は、スマホを取り出し実家に電話をかけてみる。
サンコール目で、ガチャッと力なく受話器が上った音が聞こえ、はっとする。

「あっ、お母さん。安奈だよ、元気にしてたかな」

『あー……安奈！　うん』

あきらかに覇気がないお母さんの声に、少しだけ胸がもやつく。
気にしないようにして他愛のない話を続けるけれど、いつまで経ってもお母さんはどこか上の空だ。

「あ、お父さん今日仕事休みだよね。ちょっと話せるかな」

『えっと、お父さんはね……動けないのよ』

「は!?」

『三日前に腰をやっちゃって』

お母さんが元気のない理由はこれだったのか。
なんでも、私が知らないところでお父さんは病院の外に駅の清掃バイトもしていたようなのだ。
数日前、無理がたたって駅を掃除中にぎっくり腰で倒れ、絶対安静を余儀なくされているらしい。

「うそ……私の仕送りじゃ全然足りてなかったんだ」

『違うのよ。安奈は本当によくやってくれているわ。なんとかするから大丈夫よ』

お父さんが怪我をしちゃったのもそうだけど、お金が足りていないことを隠されていたのがショックだった。お父さんが動けないとなると、これからどうやって実家は家計を回すのだろう。

（どうしよう、もっとお金が必要ってこと？）