冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
『結婚』というワードに素っ頓狂な声を上げてしまう。
遅れて動悸が速くなり、突如五十嵐さんの顔が頭に浮かんだ。
(うわ、真由子が変なこと言うから契約結婚のこと思い出しちゃったよ)
とは伝えられず、頭を抱えてしまう。
「安奈は可愛いし、若くてお肌はぴちぴちだし、結婚相談所に行けばすぐにお金持ちの男性が名乗りを上げるわよ。家の心配も払しょくしてくれる男性を選ぶ! 男は顔じゃない! 経済力と包容力と優しさよ!」
前のめりになった真由子は、いたって真剣な顔で熱弁してくる。
もちろん隣にいる彼氏さんは複雑な表情で、苦笑いを浮かべているのだが。
「で、でもそんな理由で結婚なんて、相手の男性にも申し訳なくない?」
「家がピンチの今、そんなこと言っている場合じゃないでしょ。それに、一緒に暮らし始めて相手の良さも分かることだってたくさんあるし。初めはお金で繋がっていても、愛が生まれる可能性だってあるんじゃないかな」
「そ……そう?」
「た、たぶん」
急に自信を無くした真由子は腕を組んで、苦々しい顔をする。
「安奈は恋愛にがっついてないし、なにより仕事が大好きなんだから、そこを大事にして結婚に重きを置かなくたっていいじゃないかな」