冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
こうして一騒動あったものの、私たちの同居生活は始まった。
暮らし始めてから気づいたけれど、私たちが家で顔を合わせることはごくわずかな時間だった。
それもそのはず。私たちは月の半分、空の上にいるからだ。
加えて日々半端ない数のフライトが行われており、シフトが被ることが珍しい。
「……あ、駆さん。おはようございます」
「おはよう」
すれ違いの日々が一カ月経とうとしていたある日、珍しくリビングで駆さんと鉢合わせる。
寝起きですっぴんの恥ずかしい姿の私とは対照的に、彼は既に身支度を済ませ、コーヒーを片手に優雅にタブレットを見ていた。
視線を上げた鋭い瞳と視線が絡むが、すぐに逸らされてしまう。
(まただ。本当にあからさまだな)
彼は相変わらずこんな感じだ。
時折家で出くわしても、すぐにジムに出てしまうし、自室にこもって出てこない。
初めこそ仕事にストイックで感心していたけれど、一カ月間続くと避けられてるとしか思えなかった。
「そうだ、今日のフライトはどちらまで行かれるんですか?」