冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
今までの四年間を考えたら、絶対にあり得ない。
彼の思い出といえば、睨まれるか不機嫌な顔をされるか強引に結婚を申し込まれるか、くらいしかない。
――諸事情とはいえ、せっかく一緒に暮らしているんだし、できるなら仲良く楽しく過ごしたいと『私は』常々思っている。
(これから積極的に話しかけてみようかな。真由子も相手に歩み寄ることが大事って言っていたし……!)
あちらが受け身であれば、こちらから行くしかない。
「で、お土産を買いすぎちゃったわけね。可愛い新妻なこと」
「はは、賞味期限近いから急いで食べてね」
ソウル便から戻った足で、チョコ餅が大量に入った菓子箱を会社の事務所の空きデスクの上に置いておく。
先日の駆さんの情報をもとに、とりあえず食べ物で話題作りをと考えていたけれど、色々買い過ぎてしまった。同僚におすそ分けすることにし、メモに『ご自由にどうぞ』と書いていると、隣で私を眺めていた真由子はクスッと笑った。
「でもつくづくびっくり。安奈が人妻か~! ちゃんと実行するなんてすごいよ」
「しっ!」
「ごめんごめん」