冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
寂しい――駆side
「はぁっ、はぁっ」
汗で滲んだ視界の中、高速で回転する己の足がぼんやりと浮かぶ。
さらに負担をかけるべく、ベルトを急斜面に設定し直して全速力で三十秒。
限界が目の前に見えたところで、停止ボタンを人差し指で押した。
「熱っ……」
マシンの機械音がピタリと止まり、荒い息遣いだけが部屋に響く。
シャツが汗に張り付いて気持ちが悪い。今すぐ脱いでしまいたい衝動を抑えながら大胆にシャツをめくり上げた。
(この音……777か?)
ランニングマシンの向こう側にある全面ガラス張りには、腹筋が割れた自分の姿と東京の夜景が重なって映っている。さらにその輝かしい夜空を、一台の飛行機が悠々と通過した。
エンジンの音だけでどの機体なのか分かってしまうのは、職業病としか言いようがない。
(あの中に、安奈がいるのかもな)
ここはマンションの高層階にあるフィットネスジム。最近の俺は、完全にヘビーユーザーになっていた。