冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
呆然とその場で固まる俺の目の前で、後ずさりした彼女はソファの横へと転げ落ちていく。
咄嗟に手を伸ばしたが時すでに遅し。
思いきり尻もちをついた安奈は、痛みで顔を歪ませた。
「か、駆さんがなんでっ……」
「大丈夫か? 掴まれ」
「う……、は、はい」
彼女は目を泳がせ、頬を真っ赤に染めて俺の手を握る。
直接聞かれているわけではないが、なんで俺の顔が近くにあったのか疑問に思っているのだろう。
(そんなこと、言えるはずがない)
自分の節操のない行動を恥じながら、安奈をその場に立たせる。
「あ、ありがとうございます。おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
久し振りに面と向かって話すからか、鼓動が速まる。
安奈の顔は寝起きだからか真っ赤だ。目も潤んでいる。
互いに次の言葉が見つからず、しばらく見つめ合っていると……。
沈黙に耐え兼ねた彼女が、ふいにテーブルの方へと視線を投げた。
「あれっ……? 可愛いですね、花束。どうしたんですか?」
「ああ、えっと」