冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
急に話を振られさっき考えていたセリフがまったく思い出せない。

「仕事の帰りに花屋で見つけて、いいなと思った。夏らしいし」

「確かにそうですよね! 早く花瓶に入れてあげなくちゃ」

安奈はそう言って、すぐに花束を手に取る。
目を輝かせ花びらを見つめる彼女は、無邪気に笑ってはいるが、慈しむような眼差しが美しい。俺はこの笑顔に一目ぼれした。
もう彼女を悲しませることは、今後一切したくない。

「安奈、今まで俺のせいで安奈に不愉快な思いをさせて申し訳なかった」
「え?」

背後から伝えると、目をまん丸に見開いて彼女は振り返る。

「花を飾ればこの家が少しは明るくなると思ったんだ。俺も君と楽しく夫婦生活を続けたいと思ってる……これから仲良くしてほしい」

「駆さん……」
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