冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
鼓動を速くしながら、立ち上がった駆さんと廊下を歩く。
(なんでこんなに嬉しいんだろう)
少し前から心を開き始めてくれているとは思っていたけれど、もう一歩踏み込めたのかも。
「一応薬局で薬やら飲み物を買ってくるから、部屋で休んでいてくれ」
駆さんは私の部屋の扉の前で立ち止まると、真剣な表情で覗き込んできた。
「そこまでしなくても平気です。寝てれば治りますから」
「いいから、俺の言うことを聞くんだ」
駆さんはそう言うと私の部屋の扉を開け、無理やり部屋に押し込んでくる。
抵抗する間もなく扉がバンッと閉まり、私は呆然とその場に立ち尽くした。
(ほんと……強引なところは全然変わらないよ)
さっきから心拍が速くて、心臓が苦しい。
急に額を触られたり、いろんな表情を見せてきたり。男性になれていないから戸惑っている。
心臓がドキドキドキドキ。
でもこの『ドキドキは』、推しの伊織さんに対するものとは違う気がする。
ここまで彼の鉄の鎧を壊すのに、相当な年月がかかっているからだ。
自分の長年の頑張りが報われたような気がして、なんだか胸が熱くなった――。