冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

ぐるぐると悩んでいると、ガチャッと扉を開く音が聞こえてくる。

「皆、おはよう。ミーティングを始めます」

「はい」

この聞き取りやすく落ち着いた声は菅原チーフだ。
今日もばっちり制服が決まっている。自分と同じものを着ているとは思えない。
着席する直前、彼女は斜め向かい側に座っていた私に微笑みかけた。

「村瀬さん、体調はどうかしら?」

「はい、皆さんのおかげで全快いたしました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

再び頭を下げると、ふふっと温かい笑い声をかけられる。

「気持ちを切り替えて頑張っていきましょうね。駆も相当心配していたわ」

(えっ……)

一斉に注目を向けられて、額にたらりと冷や汗が流れる。
すると菅原チーフもハッとした顔をし、みんなに笑いかけた。

「この前、五十嵐さんとご一緒した時に偶然村瀬さんの話になっただけで、深い意味はないのよ。さ、始めましょう」

菅原チーフがすぐにフォローを入れてくれたので、その場はなんとか収まる。
けれど一瞬、かなり怪しまれたのは間違いないだろう。

(もしかして駆さん、何か菅原チーフに喋ったのでは……?)
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