冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする


以前駆さんにクレーマーから助けてもらった際に、駆さんが高価な時計を躊躇いなく差し出したから私に気があるんじゃないかというあらぬ噂が立った。

(ようやくみんなが忘れ始めてたのにっ…)

こうして職場復帰した初日は、色々とハラハラさせられた一日だった。
合コンの件に関してはとりあえず、駆さんに相談すると決めた。

翌日の十六時――乗務が終わり羽田空港を後にした私は、ニューヨークから戻って来る駆さんに夕食を作るためにスーパーへと立ち寄る。彼は長期フライト後なので疲れて直帰するだろう、遅くとも二十時には帰ってくると予想する。

「お酒と合う料理がいいよね」

ネットで色々検索し、三十代男子が喜ぶという餃子をメインに作ることに決めた私は、材料を次々とスーパーのかごに入れていく。
餃子はいつもレトルト商品を買うので手作りはしたことないが、伊達に毎日自炊していない! 自信はある。
彼が帰ってくるまで時間はたっぷりあるし、丁寧に気持ちを込めて作ろう。

(同居してもう二か月か……)

彼に手料理を振舞うことも、まして一緒に食卓を囲むこと自体初めて。
これまでの関係性だったら絶対に考えられないけれど、今は私の家庭教師兼同居人として支えてくれている。というか、今回の夏風邪に関してはお世話になりっぱなしだった。

(ずっとダメなとこしか見せてないし、得意な料理で見直してもらいたいっ!)

密かな野望を胸に、最後に彼の大好きなビールを買い込んでお会計へと走る。
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