冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
駆さんは台所にいる私を発見してぎょっとする。
彼は換気扇のスイッチを入れながら、焦った表情で私を覗き込んだ。
「何があった? どうして泣いてるんだ」
「フライパンの中がとんでもないことに……駆さんに食べて頂きたかったのですが」
蓋を開けてすべてを察した駆さんは、一瞬に苦々しい顔をする。
が……すぐにいつも通りの落ち着いた表情で、こちらを振り返った。
「残っている餃子でなんとかなるだろう。他に材料はあるか?」
「えっと、トマトとアボカドが」
「じゃ、それで適当に作るぞ」
また私は再び駆さんにお世話になることになってしまった。
彼はテキパキとフライパンから削り上げた餃子をスキレットに敷き詰め、私が切ったトマトに冷蔵庫にあったモッツァレラチーズをのせてオーブンにかける。仕上げにオリーブオイルと黒コショウをまぶしてあっという間にオシャレ料理が完成してしまった。神様はいったいどれだけの才能を駆さんに与えたのだろう。
「美味しい。あのボロボロ餃子をカプレーゼにしちゃうなんて……駆さんは天才ですね」