冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
「そんなことはない」
ダイニングテーブルに向かい合わせに座った駆さんは、カプレーゼを一口は運んだ後、急遽私が作ったアボカドと豆腐のラー油サラダを口にした。
「餃子もこれも酒に合うな。美味しいよ」
「あ、ありがとうございます」
彼はぶっきらぼうな口調だけれど、褒めてくれた。
嬉しくて頬が緩ませていると、ビールを一口飲んだ駆さんはふいに視線を交えてきた。
「でも何故、急に夕飯を作ろうと思ったんだ? お互いの食事に関しては関与しない約束じゃなかったか?」
「あー……そうなんですけども」
そう。私たちは同じ冷蔵庫は使っているけれど、完全に上段下段で食料を分けている。名前もちゃんと記入しているし。
「駆さんのおかげでスペイン語も上達したし、お客様と関わる機会が増えたので何かお返ししたいなってずっと思っていて……。お食事をと思ったのですが、結局ご迷惑をおかけしてしまいました」
(ダサすぎる)
申し訳なさに肩を落としていると、駆さんはくすっと小さく微笑んだ。
「いや、安奈がいつも作っているのは知っていたから、一度食べてみたいと思っていた。頑張ってくれてありがとう」