冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
好きな人
あれから数日後――。
私は一昨日から国内線のフライトに出ていて、駆さんと顔を合わせていない。
(つ、疲れた……足がパンパン)
長崎空港から伊丹空港へ飛び、羽田空港に戻って来た。やっと退勤だ。
久しぶりに真由子と乗務が被り、心なしか疲れが軽減されたような気がするけれど。
「ねー安奈。三日連続勤務だっていうのにお肌つやつやだよね? 化粧品でも変えた? もしくは旦那さんとラブラブなの?」
シップを降り、通路を急ぐ。フライトバックをひきながら、真由子が茶化すような顔でこそっと耳打ちしてきた。
「全然だよ、そもそも彼は仕事が忙しくて家にいないし」
「じゃあなんでこんなとぅるっとぅるなのっ。なんか変わった!」
ツンとほっぺを突かれて、むっと頬を膨らます。
「し、知らないって」
本当に見当がつかないから、そう言うしかない。
何かあったといえば、駆さんとの外食を気にしていることくらいだろうか。
いつお店を相談されるのかとか、日程はいつになるのだとか。
(まだ暑いけど、秋服買ってないしな~。いい機会だし、買い物でも行こうかな)
洋服どうしようとか、髪型どんな感じにしようとか。
そんなことばっかり考えているのは、自分らしくない。
これが真由子のいう、『変わった』なのかもしれない。