冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

誰よりも先に声をかけてくれたのは、ＣＡの三上先輩だ。
彼女と会うのは、前回のフライト以来ぶり。
真由子と一緒に、三上先輩たちに軽く挨拶をし、すぐに駆さんを見上げる。

「お疲れ様です、五十嵐さん」

「お疲れ様」
彼は表情を変えず、数秒私を見つめる。
ほんの少し、切れ長の瞳が細まったのを私は見逃さなかった。
以前のように素っ気なく彼は挨拶し、背中を向けてコーパイと前を歩き出す。

「……相変わらずね、五十嵐さん」

「うん」

（ううん、ちょっとだけ違った）

少しだけ、私を見る目が優しかった。きっとみんながいる手前、普段通りに接しようとしたのだろうけど私は気づいた。
彼も私と同じく少し変わったのだ。

駆さんに続き、三上先輩たちと談笑しながら歩みを進める。
と、ポッケに入れていたスマホが震えメッセージを受信した。

（誰だろう）

何気なく確認すると、差出人は駆さんだった。

【今日一緒に帰れるか？　駐車場で待っている】

驚いて前を見るけれど、駆さんは何ともないようにコーパイと話しながらスマホをポッケにしまっている。
直接言うわけにはいかずこうするしかないんだけれど、この悪いことしている感はなんだろう。

（駆さんと一緒に家に帰るのは初だ）