冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
緊張しながら【はい】と送りポッケにしまっていると、突然肩を叩かれた。
「村瀬ちゃん。例の件、ちゃんとメンバー集まったから!」
「……っ⁉」
三上先輩が笑顔で言い放ち、後ろを歩いていた真由子が興味津々といった表情で割って入る。
「例の件ってなんですか?」
「今度、大手コンサル企業の男の子たちとお食事会をね。あ、宮沢さんも来たい?」
「えっ、食事会ってもしかして」
くるりと私を見た真由子が怪訝そうに眉を顰めている。
そりゃそうだ。結婚しているのに合コンに行く私には不信感しかないだろう。
(これには深い事情が)
『あとで話す』と真由子に口パクで伝えながら、内心別のことで焦っていた。
すぐそこにいる旦那様……駆さんにこの距離なら聞こえてるかもしれないからだ。
家でこの話題になった時に、気まずい空気になったからもう触れたくはなかったのに。
「たしか村瀬ちゃんって、伊織さんみたいなタイプが好きなんだよねー」
「あー、わかるわかる」
「王子様系イケメンもいるから楽しみにしててよ!」
私たちの話を聞いていた先輩クルーも、口々に肝が冷えることを吐き出していく。
駆さんの顔が怖くて見られない。
いくら私が本当の妻じゃなくても、こんな話、気分はよくないだろう。
(行きたくない。やっぱり断った方がいいのかな)