冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする

「もーなんで断らないのよ、日にちも決めちゃうなんて」

ミーティングが終わり、真由子に更衣室の端に追いつめられる。
私が一通り合コンの事情を説明すると、おもむろにため息を吐かれた。

「いや、旦那様懐が広すぎるわ。いくら人数合わせとはいえ逆の立場だったら安奈はオッケーする? 嫉妬しないの?」

「それは……」

考えたことがなかった。
だって私たちは仮の夫婦だから、嫉妬なんて存在しないし。

(駆さんが合コンで他の女の人と仲良くなったら……?)

正直、どんな感情になるのか見当がつかない。
最近仲がいいから、少しもやもやしたりするのかな。
口ごもる私を見かねた真由子は、くるりと背中を向ける。

「まぁ、結構歳の差婚だし、精神年齢が高い優しい旦那様なのかな」

「うん……」

真由子の言う通りそれはあるだろう。
駆さんは冷たいようでいて、実は面倒見がよく優しいのだ。それもずっと。
でも――。

『君のメンツもあるから今回の件は仕方ない。ただし、人事部にはバレないようにしてくれ。仮にも君は俺の妻だ、互いの印象が悪くなる』

合コンの件を彼が承諾してくれた時、ふと思い出したのだ。
以前私に見せていた、冷徹な一面を。
私たちは契約結婚で、利害関係で繋がっている。そう改めてはっきりと言われた気分だった。

(全部、本当の駆さんなんだろうな)
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