冷徹パイロットは極秘の契約妻を容赦ない愛でとろとろにする
駆さんの低く落ち着いた声に、緊張感が走る。
それも表情がやけに真剣だから……。
(やっぱりあの時、ぜんぶ筒抜けだったんだ)
でもまさか今、駆さんに伊織さんのこと聞かれるとは思っていなかった。
「えっと、アイドル的な意味ですよ⁉ レディーファーストだったり、よく笑ってくれたり。そういう些細な……」
「そうか」
自分が必死で弁明している意味も分からない。
駆さんは興味を無くしたようにそう言って、アクセルを踏んだ。
重たい沈黙が車内に漂う中、心臓の音が大きく体に響いていた。
駆さんが黙っているのが気になる。
今、彼は私のことをどう思っているのだろう。
弟の伊織さんが推しなのに、自分とお金で結婚したことに軽蔑したのかな。
(駆さんに嫌われたくない)
「か、駆さんはどんな女性がタイプなんですか?」
空気を変えるために、思い切って話題を振る。
すると彼はまっすぐ前を見据えたまま、表情を変えず口を開いた。
「笑顔には弱い。あとは人を思いやれる子だな」