純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その5



「そうか…。うまくできたかい?」


律也は取って付けたように、こう尋ねるしかなかった。


「まあ、相手がリードしてくれたんで。そん時に、いろいろ試されて、こっちの性癖を探り入れてくるって感じでさ。あっちとしては、中1で同性と乳繰り合った年下の男と子ってことで、逆に関心持ってたみたいで…」


「ユウト、全部了解だよ。正直に言ってくれてありがとう」


「いや、もっと早く言わなくちゃって思ってたんだけど…。すまなかったね。メールとか電話ってのも気が引けたんで…。それで、そっちは彼女とかは?」


「まだいないよ。正直、焦ってるんだ…。オレ、キミよりはその性癖ってとこだと、少し屈折してる感じの自覚はあるんで。この年であんな経験して、ちゃんと君みたいに女性と人並みな営みってできるのかなって、そんな不安はあるんだ」


この時の律也はなぜか、ありのままの自分をユウトに明かすことができた。
それって…、他ならぬユウトだからこそ…とかだったのか…。


***


ユウトはそんな律也の胸の内を慮ってか、彼にしては珍しく眉間にしわを寄せた、少し険しい顔つきで彼を少しの間、じっと見つめていた。
そして、やや低いトーンで口を開いた。


「きっと好きな子ができれば…、とかって言ってやりたいけど、”あの個室”の当事者だからさ、あえて言うけど…。最初の女とのハメなら、経験を積んだ年上の方がいいと思う。やっぱりね…。単純に好きなって子ってことだと、後々アダになるリスクってあると思うんだ」


「年上か…」


ユウトの忌憚のないアドバイス…。
不思議とこの時の律也には、すっと入ってくるものがあったのだった。


***


「うん…。まあ、何もうんと年が離れてる必要はないしね。実際、オレも律也と同じような不安から、あのヨーコって人とってとこはあったんだ」


「なるほどね…」


「律也は大事なヒトだし、オレもあの児童館のことがアダになって欲しくないんで…。だから、できるなら力になるよ」


律也はユウトの気遣いがとてもうれしかった。
あの極めて稀有な”体験の川”を共に渡った、その彼だから汲んでくれることのできる、自分の内面を親身に理解してくれる思いが…。


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