純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その2



「…酒盛りってことなんだよ、土曜の夜は。前々から誘われててね。酒くらい早めに経験しとけって、ヘンな説教をするんだ。あの年上(苦笑)」


「酒か…」


「それで、その場には川原で一緒だったもう一人も来るんだ。チヅルって人が…。もっとも、それも昨日、彼女から聞いたことだけど。だから、君が来れば男と女ふたりずつってことになる…」


そう言うことな訳だった…。
当然、律也もすぐにユウトの言っている意図は察したが、返事の前にいくつか確かめたいこともあった。


***


「それって、要はチヅルさんって人がオレってことなの?それとも、ヨーコさんの、何て言うか…、思惑とかってことでオレをご指名なのかな?」


ユウトには律也の言いたいことが理解できていた。
彼は言い回しを頭で整理した上で、こう答えた。


「思惑っていうなら、彼女ら二人のってことだろうね。その夜は家の人がいないらしいから、酒が入ったらたぶん”無礼講”のノリだと思う。一応、オレとヨーコはカップルってことだから、残った二人が君とチヅルさんってなればね…。オレ的には、”その展開”が二人のアタマだと思う」


「じゃあ、チヅルさんは少なくとも、川原でオレとは会ってる訳だから、その上でってことなんだよね?」


ここでユウトは満面の笑みを浮かべて律也にこう返した。


「そういうことだよ。君に興味を抱いてる。少なくとも、いい印象を持ったから来るんだ。ヨーコさんに強引とか、いやいやじゃあない。それと、聞かれると思うから先に言うけど、オレも君には来てほしいんだ。というより、来るべきだよ」


***


彼はかなりきっぱりと、言葉は柔らかかったが、言わば律也に何かを突きつけたのではないか…。
その何かは、数日前の川原で彼が律也に語った言葉に含有されていたと。
そして、律也もそれを悟っていた。


「わかった。行くよ!」


「そうか!じゃあ、ヨーコにはそう伝えるわ。彼女の家は児童館の近くだから、当日はそこで待ちあわせるか?」


「了解。…ユウト、キミの気持ちには感謝してるよ」


「…」


何故か…、ユウトからすぐには言葉が返って来なかった。
彼はどこか物憂げに目を細めて、律也の顔をじっと見つめていた‥。





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