純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その5




「先生…、すいません。急にお腹が痛くなって…。トイレ行って来ていいですか?」


律也は、身長・体重・胸囲を測定する最初のブース前に進んだ時点で、付き添いの男性教諭に申し出た。
つまり、衣服を脱ぐ直前のタイミングを見計らっての決行だった


その際、しっかり腰を曲げて、下腹部に手を当てて…。
男性教諭はその様子をひと通り観察するようにチェックした後、退列許可した。


***


「後ろのクラスが入室する前に戻れよ」


「はい。…大体どのくらいの時間ありますか?」


「そうだな‥。7、8分すれば2組がここのブースに着くだろうから、それまでに済ませて来い」


律也の掴みはカンペキだった。
思わず口元をほころばして、腕時計でリターン時刻を頭にいれた律也は駆け足で走ってトイレに向かった。


腹を抑える”演技”を怠らずに…。


***


”よし…。5分以上あれば、ユウトのハダカ想像して一発抜ける。そのあと、実物を拝めるんだ‥”


若干12歳の律也は、”純真なる心”で同年の少年に熱き想いを寄せた。
そして、その己の気持ちに従っての素直な行動ではあった…。
だが…、彼のユウトへのめり込みはあまりに急激だった。


性欲が泉のように沸き立つ思春期真っ盛り律也にとって、それは、目覚めたばかりの性的対象が本来の然るべき異性ではなく、”一目ぼれ”の少年だったことで、”屈折”のアダ花が萌芽することとなる…。




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