純心と屈折と/少年に心を掴まれた少年
その6



律也は3階の男子便所に飛びこんだ。
無論、”個室”へとなる。
ここは旧校舎で、大の個室はまだ和式だった。


神聖なはずの学校にいるのに、すでに律也性的欲求を抑えることができなかったのだ。


”時間がない…。さっさと済ませないと。後処理も必要だし。パンツのしみ出しなんか見つかったら、いじめのターゲットになっちゃうからな…”


彼はしっかりコーフンしてはいたが、意外と冷静ではあった。


***


一番奥の個室を選んだ律也は中に入ると、施錠を確認し、速攻でズボンを下げた。
そして目をつぶり、さっそく自慰行為にかかった。


当然、閉じた瞼を支配したのはユウトだ。
彼の白い歯をのぞかせた笑顔、勢いよく8段を飛んだ時、風にそよいだ柔らかそうな髪…。
何しろ彼は、匂ってくるようなキュッとした肉感を発していた。


そんなカレのハダカをもうすぐ拝める…。
その想像一本で、律也はモロ、カレにKOされた。


それは、オトコノコ同士にしか伝達しえないフェロモン…。
そう言えたのかもしれない…。


かくて、短い制限時間内での”果敢なトライ”は展開を見る。
それは誠にリアルかつ、陰陽を交差させた卑猥な数分間であった。
もう律也は心臓がバコンバコン波打って、すでに頭はクラクラしていた。


性に目覚めて間もない細身の少年は、12歳にして”オトコ”で果てたた…。


***


この間ジャスト2分…。
律也はその余韻に浸る間もなく、事後作業を強いられた。
しかしながら、その最中も、彼自身はまだ恍惚の中にどっぷりとであったのだ。

”ヤバい。またうずうずしてきた。早く戻らなきゃ…”


律也はそそくさとズボンを上げ、今自分が汚した箇所の掃除を済ませると健診会場へと急いだ。
なんともどんより模様のうしろめたさを抱えながら…。


それは、犯罪を犯したニンゲンがその証拠を抜き取る作業…。
年端の行かないローティーンの少年のココロを包み込んでいたのは、自己嫌悪と罪悪感に他ならなかった…。
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