僕たちは嘘が吐けない
「遅刻とはいい度胸ね。」
安斎 千景は、某珈琲店のテイクアウトカップを持ち上げると、ゴクリと喉を鳴らした。
第一印象は、こうだ…
最初に到着したメンバー大野 瑞希…通称ミッキーは、若干残るアルコールに、吃逆を引き起こした。
その理由が、吃驚した事によるものなのは明白であるから、彼はその場で恐縮してしまった。
革張りの黒ソファーの背に凭れ掛かる安斎は、自分と察して変わらぬ瑞希に対し鋭い眼光を向ける。
「とりあえず座ってください。他の二人を待ちますので、」
「…あ、はい。」
新しいマネージャーが赴任する事は、つい昨晩聞いたばかりだった。
それも、彼が夜遊びをしている最中の連絡の出来事。
前任マネージャー村井から送られてきたグループチャットには、現時刻から三十分も前には、この場に訪れろとの指示。
他二人も既読を付けて、尚且つ承知のスタンプを送っていた。
…のだったが、
「大野さん、目黒さんと藤木さんに連絡して下さい。あと一時間以内に到着しない場合は、活動休止だと…そう伝えてください。」
連帯責任とでも言いたげな新マネージャーの警告に、グループいちの酒豪ミッキーは苦笑いを浮かべた。
目の前の女のオーラが、そんじょそこ等の人間とは別物だからだ。
初対面で大野は全身に鳥肌が立ってしまった。
さあ、緊急事態が発生しましたが、あと二人は無事間に合うのでしょうか…。