結ばれない二人
『ガシャーンッ!!』ものすごい音がして、思わず顔を上げる俺。
目の前で松本が置いておくように言った段ボールの書類を派手に床にまき散らしているのが視界に入った。

すぐに、時計に視線を向ける俺。

時刻は今11時半。
あと30分しかないのに。

「すみません。」
俺は時計からまき散らした書類をしゃがんで拾う彼女の方に視線を戻してすぐに近づく。

早く書類を拾って、順番に並べなおして、今やってるメールの添付書類を仕上げて、昼までに送信して・・・

あれこれ頭の中で仕事の段取りをする。
「すみません。私、ドジで。本当にごめんなさい。」
はじめてのことを、スムーズにこなせる人などいない。
俺は、本心が彼女に気づかれないように注意をしながら、「大丈夫。怪我ない?」と社交辞令を口にする。
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