結ばれない二人
「そっか」
明らかに俺は安堵しながら、それ以上聞くことはせずにまた歩き出す。

もしもこの手を離してと言われたら、その時俺は素直に離せるだろうか。

どうして、朱莉の言葉をちゃんと最後まで聞けないのだろうか。

その勇気を持てないのだろうか。

余裕を持てないのだろうか。

朱莉が飲み込んでいる言葉を口にした時、朱莉は自由になれると知っているのに。


そんなことを考えていると朱莉が強い力で俺の手をギュッと握ってきた。

俺はそんな朱莉の手に安堵して、それ以上に強い力で握り返す。
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