結ばれない二人
でも・・・

大好きだったあなたのそんな世界すら、私が奪ってしまった。

あなたの仲間も。
一生懸命だったあなたの努力も。
悔しさをばねにまた立ち上がっていた思いも。

すべて・・・。

「朱莉っ!」
足音が近づいてきて、私が思わず顔を上げると、そこにはもうすぐ冬だというのに、吐く息が白くなりながら、額に汗を滲ませているあなたの姿。
「飲めるか?」
当たり前のように、手に握っている缶のタブを開けて私に渡してくる。

「ほら」
いつまでも手を伸ばさない私に、あなたが私の手をとり、手にしていた缶を握らせる。
< 8 / 128 >

この作品をシェア

pagetop