結ばれない二人
「朱莉・・・朱莉?・・・朱莉っ・・・」
うなされて泣き出しそうな朱莉を慌てて起こす。
「朱莉っ!!」
朱莉の体をゆすると朱莉の体にはじっとりと汗をかいていた。

あの日の夢をみていたのだろうとわかる。
体調が悪くなると朱莉は夢にうなされる。

「おいで」
俺は思わず朱莉の華奢な体を抱き寄せた。
こんな風に朱莉を苦しめているのは俺のせいだ。
なのに、こんな風に朱莉を抱きしめて触れる資格なんて本当はない。
朱莉を抱きしめて「大丈夫」なんていう資格などないのに。
俺にはこんなちっぽけなことしかできない。

「・・・ごめんね・・・」
謝らないとならないのは俺なのに、朱莉が消えそうな声でそうつぶやく。
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