一条さん結婚したんですか⁉︎


 あの一条さんが、辞めるだと⁉︎


 





「ただいま花ちゃ〜ん!俺仕事辞める事にしたっ。」


「ーーーぬ⁉︎」



 みー君は愛する嫁の為に、残業は致しません‼︎

 定時で上がり、足早に電車に乗って帰って来たのですが....。


 リビングの扉を開けた旦那様、キッチンでは鍋でじっくりコトコト煮込み料理を作る嫁の姿。


 開口一番、普段通りの甘ったるいフェロモンダダ漏れボイス。

 だがしかし、花ちゃんは旦那様の二言目に、動揺を隠せない。


 お玉を動かしていた手を止め、ヘラヘラ笑ってる旦那様の美顔から目を離せない。


「今、なんつった?」

「だから〜、花ちゃんの為に会社辞めるのよ。」

「え、だから何だって?」

 花ちゃんは、戯言だと思いたいみたい。


 だけど旦那様は、冗談を言ってる様には見えません。

 みー君は、床に鞄を置くと、キッチンへと入り花ちゃんの元へと向かう。



 エプロン姿の花ちゃん....可愛いですね〜。ふにゃりとだらしないみー君の表情。


 まるでスライムみたいに、とろっとろに蕩けた旦那様の顔面。


「俺の世界一可愛い奥さん、夕飯の前にアナタを頂いてもいいですか?」


 花の頬に手を添えて、親指で唇を撫でる。


 空いた口が塞がらない花の下唇を右往左往すると、歯列に指を滑べらせた美郷....。




ーーーガリッ‼︎



 花は美郷の親指を噛んだ。すると、突然の事に咄嗟に指を抜いた美郷は、花の唾液が纏った指を見た。


 艶やかにコーティングされた指....美郷はその指を舐めようと....試みるのだが、その向こうには、愛しの奥さま改め、般若が居たので思いとどまった。


「え....花ちゃん?」





 今し方、沸騰する鍋に突っ込まれていたステンレス製のお玉が揚げられて、湯気を立ち昇らせながら構えられていた。


「美郷....いったいどーいう事なのか説明してもらおうか。」



 花ちゃん....本気で怒ってる時だけは、美郷って呼び捨てにしちゃうんですねっ。






(....一条さん、ピンチではないですか?)
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