一条さん結婚したんですか⁉︎






 色鮮やかな景色、子供の頃見えていたモノが、大人になると、それが大した事は無かったのだと気付く事が多い。

 





「....はーい。みんな静かに〜。」



 騒がしい教室内、六年一組。三十人程のクラス。

 一条 美郷が小学生の頃、夏休みを終えて初の登校日。


 小学生のくせに、身長はクラスいち高く、顔立ちは幼さを感じさせず大人びて、変声期を早くに迎えていた美郷少年は、ランドセルを背負わなければ、中高生に間違えられる事がしばしば....。


 

「なになに⁉︎転校生⁉︎」



 担任の女教師が威勢よく入ってきたかと思えば、その背後にひっそりと俯きながら続く赤いランドセル。

 
 美郷少年の横の男子が、興奮気味に前のめりながら、初めて見る女の子に興味津々だった。


「みんな久しぶりね。夏休みは有意義に過ごせたかしら?」

「先生、その子誰ですか〜?」

「あ、そうね。先に紹介しなくちゃだよね。」


 真っ黒で艶やかなロングヘア。猫背なのかそれとも緊張して俯いている所為なのか、目元をひた隠しにするぱっつん前髪のカーテン。


 担任がその女の子の肩に手を添えて、生徒諸君の方へと向かせる。



「ご家族のお仕事の関係で、この町に引っ越してきた....二条 花さんです。」



 その異常に小さな体が、ぎこちなく頭を下げた。


 真っ白な肌、黒地に白の水玉模様のワンピースから姿を見せる痩せ細った手脚。


「....よろしくおねがいします。」


 ぼそぼそとハッキリしない声量に、クラス中が耳を傾け、首を傾げた。


「さ、二条さんは....えーっと、一条君の隣に座ってもらうわね。」


 美郷少年の横に置かれた空の机。その逆に座る男子がぼやく。


「なんか小芥子みたいなの来たな....。」



 突然の転校生が、地味で辛気臭い女の子だったとなれば、興味は削がれる。

 可愛い子が来たら、みんなにちやほやされて、動物園のパンダみたいに注目されてたに違いない。
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