一条さん結婚したんですか⁉︎



 何の為に俺が、この会社に尽くしてきたのか....。

 

「社長、本物の一条です。とりあえず私の話を聴いていただけると幸いです。」



 夢現(ゆめうつつ)でも構わないから、その耳にさえ入ってくれればいいのだ。



 今から語るのは、俺の恋物語....。

 結婚に至るまでの今までの経緯と、未来の話を....。


 
 







『美郷ってさ、女遊び激しそう。』

 大して仲良くなったつもりもない高校時代のクラスメイトの女子は、当時俺の周りをウロチョロとしていた。

 男子に関しては交友を深めていたが、女子と仲良くなったつもりはない。

 ただ、俺がいつも連んでる奴等と仲が良いってだけで、自然に俺のテリトリーへと汚い足で踏み込んで来た女子たち。



 いつメンと都合良く称された男女混合のグループは、苦痛でしかなかった。

 
「確かにっ!!それに美郷ってば、放課後うち()と全然遊んでくれないよね~。」
 
 その時は、男子四人と女子が二人の六人の集まりだった。

 女子同士は超仲良しなのだと豪語していた。その内の片方が、たまたま他三人の男子と交流があったらしく、気が付けば常に側に居たのだ。


 俺以外の野郎どもは、クラスでも一二を争うらしい可愛い女子と行動を共に出来てご満悦だったらしいが、俺にとってはこの二人は邪魔者でしかない。

 
 偶々俺が一人の時に、近寄って来た女子は、普段は友達ぶっている癖に、二人きりになると、急に女を出してくる。


「今度、二人で遊ばない?」

「いや、忙しいから遠慮しとく。」

「え~!!なんでよ。」


 目的地へと向かう最中に、足止めをする様子で、俺の腕に勝手にしがみ付いて、胸を押し付けてくる。
 
 鼻が曲がってしまう程の強烈な香水の異臭に不快感を抱き、そして嬉しくも無いボディタッチ。

 出来る事ならば、今すぐ払い退けて、終いには手を挙げてしまいたいものだ。

 その気色の悪い猫撫声が、俺の前で一生吐けぬ様に喉を捻り潰して、触れようとするその体が動かなくなればいいのに....などと心に闇を抱く。

 昔からそうだ....。俺に近付いてくる女は、表面上でしか俺を見てくれない。

 少しだけ裕福な家庭で育ち、親の遺伝子の善い所だけを受け継いだ頭脳と容姿。

 家庭内は殺伐としていた。綺麗で新鮮な女にしか興味がない親父。外で何人も女を作って浮気三昧。

 そんな親父の不貞に気付いている癖に、今の豊かさを捨てられない母さんは、知らぬ振りして親父の稼ぎで豪遊三昧だった。

 二人は典型的な、外見で相手を選んだ夫婦に違いない。


 自分に見合った相手と結婚したに過ぎない。

 外面だけは良い夫婦を演じ、蓋を返せば、私利私欲。

 世間体だけは気にしているのか、絶対に別れる事は無い。

 心は既に離れてしまっていると言うのに....。




 
 
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