一条さん結婚したんですか⁉︎
人は見た目で判断される。それを嬉しいと思うのか、悲しいと思うのか....。
初めこそは、周りからチヤホヤと褒められている事に酔い痴れていた。
だけど、それも次第に飽きてくる。
俺を好きだと言う女は、決まって同じ顔で、同じ声で、同じ台詞を吐いている気がするのだ。
妙な雰囲気を醸し出し、近付いてくる女を避けだした。
だけど俺のそんな態度にも、気付けない馬鹿な女ばかり居るのが現実なのである。
モテればモテる程、選択肢が広がると思ったら大間違いだ。
目の前に並べられたカードには、面白味は無く、それ以外を引く行為を阻もうとする勢いすら感じる。
選ぶ側と選ばれる側。両者の理が一致した段階で契約が締結する。
だけど、俺の目の前に並べられたカードは、俺が選びたいカードなどでは無い。
選んでほしいからと、俺の前に名乗り出たカードなのだ。
「私たち最近超いい感じだし、このまま付き合っちゃう?」
自分の都合の良い解釈で、勘違い女が俺に愛を乞う。
俺というブランドを横に置きたいだけの奴等。
より綺麗な物を欲するのが悪いとは思わない。それは個人の自由だ。
だがしかし、それにおいそれと動じる俺ではない。
「悪いな....俺には、大切な女が居るんだわ。」
「....え?」
いつだって思い浮かぶのは、たった一人の女だけ。
初めて俺の外見に惹かれなかった唯一の女。
仄かに漂う花の甘い匂いが大好きだ。
誰にでも平等に接する花にだけ信用を置く。
そして俺だけが知っている花の本性。
「俺の好きな女は、俺が初めて惚れた女なんだ。」
出会いは数年前、偶然と俺の前に現れた冴えない見た目の女。
人見知りが激しいのか、自ら外の世界へと踏み込もうとしない奴。
飾らず、気取らず、第一線から三歩分は身を退いて、自分だけの世界、価値観を貫こうとする純粋な心の持ち主。
(自分だけの世界に居る花が、とても羨ましかった。)