必ず、まもると決めたから。
第1章 全てはあの夜に
ひらひらと舞う花びらが、彼の右肩にそっとおちた。
数歩前を行く彼を追い越そうか迷う間も無く、長い足は颯爽と家路に向かっている。
それにつられて自然と歩調を速めたけれど、声をかけられはしない。
あの、花びらが肩に。
そう言って話しかけたところで、無視されるか、仮に立ち止まってくれたとしても、大した反応は示さないだろう。
田中 桜誠とはそういう人だ。
ほとんど話をしていないのに、相手を決めつけるなって思われるかもしれないけど、私だって何度か話しかけてはみたよ。
たまたま隣りの席になった田中くんに、いくつか言葉を飛ばしてはみたけれど、無視が9割、残り1割は「うん」や「そう」と言った短い返事のみで、会話にはならなかった。
校門前で追い風が吹き、肩の花びらが、再び宙を舞う。
その花びらにそっと、手を伸ばす。
あ、掴まえた。
そう言って前を向き直った時にはもう彼の姿はなく、手におさまった花びらをそっと包みこんだ。
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