必ず、まもると決めたから。
さらさらな前髪は押さえていないとまた元の位置に戻ってしまうので、彼に触れたまま目を合わせる。
やっと、目が合った。
長い睫毛と、意志の強そうな黒い瞳に吸い込まれそうになる。
「ーー私、田中くんのことが好き」
これは勢いに任せたと言うのだろうか。
でも、今、伝えたいと思った。
「愛ちゃんに嫉妬するくらい、田中くんのことが好きです」
田中くんの目が大きく見開く。
まさかこんな場所で告白されるとは思わなかっただろう。
私だって、異性に告白をしてもらうものだと、そう憧れていたのに。
「…ごめん、俺には好きとかそういうの、よく分からない」
「……」
「でも、青山とはこの先もずっと一緒にいたいと思ってるし。他の女はいらない」
「…なにそれ。私、フラれたの?」
「フッてない」
「…でも、好きでもないんでしょ」
「……」
伸ばしていた手を掴まれ、強く握られた。
すぐに恋人繋ぎになる。
「こんな俺で、ごめん。でも、傍にいて」
好きでもなくて、でも傍にいて欲しい。
ーーその意味が、私には分からなかった。
繋いだ手の温もりが示す関係を私たちは言葉にでないでいた。
この時は、なにも分からなかった。
田中くんの学校嫌いのその理由を知る時まではーー。