必ず、まもると決めたから。
黒板に描かれた図形とノートを交互に見ながらシャーペンを走らせる。教科書を読み込む間も無くすぐに消されてしまう板書を写すことに精一杯だ。
「先生、一番最後の数式って…」
質問する余裕があるクラスメートも、教科書の影に隠れてスマホを操作する生徒もいる。なによりサボっているわけでなく、塾でとっくに学習を終えた範囲だというから驚きだ。
生徒へ質問の回答が終わった後、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「よし、ここまでにしよう。よし、田中と青山、ノートを頼むな」
「はい」
数学の武藤先生に名前を呼ばれ返事をするが、隣りの席の田中くんは特に反応を示さなかった。
武藤先生は毎回、宿題を出すために私たち数学係は授業終わりにノートを集めて準備室に持って行く。
2つに積まれたノートの高い方を田中くんが運んでくれることも、お決まりだ。