必ず、まもると決めたから。
少女漫画ではクールで無愛想な男子が、ヒロインの前だけでは優しい笑顔を見せるなんてことはよくある展開だ。ツンデレって胸キュンだよね。
あ、別にそれを期待しているわけじゃない。田中くんと特別な関係になりたいと思っているわけではなくて、ただクラスメートとして仲良くしたいだけなんだ。
必ず数学準備室の扉は田中くんが開けてくれる。そう決めたわけではないけれど、いつも自然な流れで開けてくれて、優しいなって思う。
悪い人じゃないって分かってるから、普通に喋りたいだけなんだけど…。
私から声をかけたあの日から、相変わらず会話をするどころか目元にかかる長めの前髪のせいで、田中くんが私のことを見ているかすら分からない時がある。よく確認しようとすると、顔を背けられてしまう。
まぁ私は漫画のヒロインでないし、田中くんの心を動かすなんて大それたことはできないから、しょうがないよね。