星と月と恋の話
その日は、盛り上がったままお開きになって。

家に帰って頭が冷えて、ようやく私は事の重大さに気がついた。

…私。

明日、あの三珠クンにコクるんだよね?

ベッドの上に体育座りになって、クッションを抱き締め。

改めて、明日待ち受けていることについて考える。

罰ゲーム、重過ぎない?

他の男子ならともかく、あの三珠クンだよ?

クラスで一番暗くて地味で、冴えなくて何考えてるか分からなくて。

典型的な陰キャ、って感じで。

異性どころか、同性の人間にも避けられてて。嫌われてて。

そんな相手に、告白する?例え罰ゲームだとしても?

正気の沙汰とは思えないよ。

「うぉえ…。嫌過ぎる…」

やっぱり恥を忍んで、罰ゲーム辞退すれば良かった。

あのときは意地になって、頭もハイになってたから、つい売り言葉に買い言葉でやってやる、なんて言っちゃったけど…。

本気でやるの、私…?めっちゃ嫌なんだけど。

でも、今更「やっぱりやめます」なんて言い出せない。

三珠クンにコクるのも嫌だけど、逃げるのも嫌だし。

…かくなる上は。

「三珠クンが…断ってくれることを祈るしかないよね…」

私は、ポツリとそう呟いた。

うん、断る断る。三珠クンは断るよきっと。

さすがにね、そこまで厚かましくもないでしょ、彼も。

例え三ヶ月の期限付きでも、三珠クンと付き合うなんて絶対無理。

「断る、三珠クンはきっと断る。よし、そう信じよう」

私は、自分にそう言い聞かせた。

自分が三珠クンの彼女になるなんて、想像もつかない。

私の好みのタイプとは、真反対だし。

きっと三珠クンにとっても、私はタイプじゃないに違いない。

いや、彼がどんなタイプを好きかなんて、知らないけど。

そもそも、異性に興味があるようにも見えないしね。

あれだけ冴えなくてモテないんだから。

自分に恋愛は無理だって、ちゃんと自覚しているだろう。

だから、きっと断ってくれるはず。

そう信じて、私は翌日。




運命の日を迎えた。
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