星と月と恋の話
…正直に言って良い?

恥ずかしくて、泣きそう。

でも、結月君は全然それどころじゃないみたいで。

「どうして…こんなになるまで黙ってたんですか?」

スニーカーを脱いだ私の足を見た、第一声がこれだった。

結月君がそう言うほど、私の爪先は酷いことになっていた。

血が出てるんじゃないかと思ってたけど、やっぱり血が滲んでいて。

薄ピンクのソックスに、点々と血の跡がくっついていた。

右足の方も、血は出てないものの、真っ赤に腫れていた。

うぅ…。

「ご、ごめん…。つい…おニューの靴履いてきちゃって…」

「こういうときは、履き慣れた靴を履くのが鉄則ですよ。…って、これも事前に言っておけば良かったですね…済みません」

「いや、結月君が悪いんじゃないから…」

痛みを感じた時点で、見栄を張らずに、一度家に引き返して履き替えてくれば良かった。

「いえ…気づかなくて済みませんでした。ずっと痛かったですよね?」

「う、うん…まぁ…でも、平気だから」

「平気じゃないですよ…。言ってくれたら、すぐに引き返したのに」

本当にごめんなさい。

見栄張ってここまで来ちゃって、帰り道どうしよう…。

と、思っていると。

「少し、ここで待っててください」

「え?」

結月君は、ポケットからハンカチを取り出し。

それを持って、走り出していってしまった。

ど、何処行っちゃったんだろう?

かと思ったら、駆け足ですぐに帰ってきて。

「ちょっと痛いかもしれないですけど、我慢してくださいね」

「あ、え、うん」

結月君は、水で濡らしたハンカチで私の腫れた爪先をそっと拭ってくれた。

あ、ハンカチ…濡らしに行ってたんだ。

って言うか、ハンカチ持ってきてたのね。

さすが、女子力の結月君。

しかも、こちらも手縫いなのか、相変わらず和柄のハンカチだった。

「痛いですか?」

「ううん、冷たくて気持ち良い…」

ベンチに座って、靴を脱いでソックスまで脱いで素足を晒して。

腫れた爪先を、ハンカチで拭いてもらうなんて。

みっともなくて仕方ない。

不意に周囲の視線が気になって、私はチラチラと周りを見た。

絶対目立ってるに決まってるよね?

「ゆ、結月君。もう…もう大丈夫だから」

「何も大丈夫じゃないですよ」

「い、いや…その、恥ずかしいから…」

ここまで歩き通しで、当然靴の中は蒸れてるに決まってるし。

ましてや、男の子に素足を晒して、しかも素手で触られて。

周囲の視線が気になる、どころの騒ぎじゃない。

しかし。

「そんなこと言ってる場合じゃないです」

そう言って、結月君は持ってきたリュックをゴソゴソと探り。

絆創膏を、数枚取り出した。

…結月君。

君の準備の良さに、私は脱帽したよ。
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