星と月と恋の話
靴ずれは、そう簡単には治ってくれない。

案の定、歩き始めてしばらくすると、またじわじわと痛み出した。

結月君に手当てしてもらったお陰か、さっきよりはマシなんだけど。

それでも、やっぱり痛いことに変わりはない。

大丈夫だろうか。

帰りは下り坂なんだし、勢いで降りちゃおう、なんて軽く考えてたけど…。 

むしろ下り坂の方が、爪先が靴に当たって…。

このままじゃ、またさっきみたいに痛み出し、

「痛いですか?」

「へっ?」

結月君が、いつの間にか私の目の前に立っていた。

びっくりした。

「ちょっと休みましょうか。足見せてください」

「え、いや、大丈夫だから」

「そこに水飲み場があるので、ちょっとハンカチ濡らしてきますね」

話聞いてくれてない。

強引に座らされ、強引に手当てされてしまった。

「やっぱり、また腫れ始めてるじゃないですか」

「…平気だよ…。少なくとも、さっきよりはマシだし」

「時間がかかっても良いので、もっとこまめに休憩しましょう」

…うぅ、申し訳ない。

行きだけではなく、帰りもこんなに気を遣ってもらっちゃって…。

これじゃ結月君、景色を楽しむどころじゃないよね。

私もそうだけど…。




…と、まぁこまめに休みながら、頑張って帰り道を歩いてみたものの。

残り、あと20分くらいになって。

「いたたた…」

「大丈夫ですか?」

座ってみると、爪先が真っ赤に腫れている。

水で濡らしたくらいじゃ、もう気休め程度にもならない。

ハイキング恐るべし。

って言うか、私がハイキングを舐めてたから、こんなことになってるんだけど。

折角絆創膏を貼ってもらったのに、また血が滲み出してるし…。

「貼り直しますね、絆創膏…」

「ありがとう…」

何枚持ってるの、って思われてるかもしれないけど。

結月君、箱ごと持ってきてるから。
 
何枚でもペタペタ貼ってくれる。

ごめんね。弁償しなきゃならないね。

「ちょっと休んだら、また歩けるから…」

「…無理しないでください」

「大丈夫大丈夫。あと少しだし、頑張るよ」

ここまで来たら、あともうひと踏ん張りだ。

家に帰るまで、何とか…。

と、思ったら。

結月君が、私の前にしゃがんだ。

…え?

「掴まってください。おんぶして降りるので」

「えっ!」

まさか、それ…。

本気で言ってたの?

じょ、冗談だとばかり思ってたんだけど…?
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