星と月と恋の話
私は今、どうするべきなのか。

「早く掴まってください。僕がおんぶして降ります」

「そ、そんな…!は、恥ずかしいよ。自分で歩くから」

「恥ずかしいなんて言ってられないでしょう、怪我してるのに。来週までに治らなかったら学校に来るのも大変でしょう?」

いや、そんな。

そうかもしれないけど、だからって。

「い、いや、でも、私ほら…重いから。結月君潰れちゃうよ」

「潰しても良いんで乗ってください、早く」

言ってることめちゃくちゃだよ、もう。

君が潰れたら、私まで地面に突っ伏しちゃうじゃないの。

「ほら、早くしてください」

「うぅ…」

覚悟を決めろと言うのか。

しかし、全ては身から出た錆。

有無を言わせない調子の結月君に、私は何もかもを諦め。

降参して、結月君の背中にしがみつくしかなかった。

「じゃ…お願いします…」

「はい。任せてください…」

結月君は、自分のリュックを前抱きにして。

背中に、私を乗せて。

よいしょ、と私を背負い上げた。

多分今頃「こいつ思ってたより重いな」って思ってるんだろうな。

そうと分かってたらダイエットの一つでも…って。

こんな情けない理由でおんぶされることが分かったら、ちゃんと履いてくる靴くらい気をつけるよ。

あぁ恥ずかしい。

男の子におんぶされるなんて、ちっちゃい頃お父さんにおんぶされたとき以来だよ。

まさか、高校生にもなって、おんぶされることになるとは。

周りの視線が痛い。

「ごめんね、結月君…。重いでしょ…」

「あ、いえ…大丈夫ですよ」

「正直に言って良いのよ…」

だって私、最近コンビニスイーツにハマっちゃってさぁ。

あっちのコンビニで今週の新作プリン、こっちのコンビニで今週の新作アイス。

おっとあそこのコンビニで、先週新発売のケーキを買うの忘れてたわ、みたいなノリで。

何だかんだ、しょっちゅうコンビニスイーツばっかり食べてんだもの。

当然、体重に反映されるに決まってる。

「…まぁ、ちょっとは重いなと思いますけど」

ほらね。

君は正直だ。

「でも、全然許容範囲なので、安心してください」

「重いって言われて…安心出来る女の子はいないわよ…」

諦めなさい、私。

全ては、新品の靴を履いてくるなんて過ちを犯した自分が悪い。

ハイキングを舐めてはいけない。

それが、今日の教訓だったわ。

結月君の女子力の高さと、そして彼の力持ちに助けられた。
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