星と月と恋の話
「…そういえば、星ちゃん。そろそろ、『アレ』の時期じゃないの?」

その話を切り出したのは、真菜だった。

…「アレ?」

「何?『アレ』って…」

期末試験のこと?

だとしたら、思い出したくないから言わないで欲しいんだけど?

「ほら、三珠クンとの家デートよ」

期末試験どころじゃなかった。

それ以上の爆弾が投下された。

成程、それならまだ…期末試験の方がマシだったわ。

思い出したくないことをズケズケと…。

…でも、受け止めなければならない事実なのよね。

「あー、そうだそうだ。三ヶ月のうち一回は家デートする、ってプランだったもんね」

「そうそう。そろそろ済ませておくべきじゃない?三ヶ月の期限も、もう半分を過ぎてるんだし」

海咲と真菜がそう言った。

そっか…。いつの間にか、半分過ぎてるのよね。

何だか、予想以上に早かった気がするなー…。

って、それはともかく、家デート。

家デートだよ?

それまでのデートとは、スケールが違うわ。

普通に付き合ってるカップルでも、家デートと言ったら、一歩ステップを踏み出してるわよね。

それを、罰ゲームで付き合ってる結月君と…。

別に疾しいことは何もない。

ただ家に来てもらって、ちょっとお喋りして帰ればそれで良い。

たかがそれだけのことなんだけど。

結月君が、私の家に来る。

そう考えるだけで、思わず身構えてしまうというものだ。

家デートしろ、とは言われたけど、どちらの家で、という指定までは受けていない。

だから家デートをするなら、私の家でも、結月君の家でも良いのだけど。

どうせ、誘うとしたら私からなんだし。

そうなると、結月君の家に押しかける訳には行かないわよね。

やっぱり「今度の週末、家に遊びに来ない?」みたいな流れになるよね。

未だに、結月君の方からデートに誘ってくれたことってないからなぁ。

奥手にも程があるでしょ、あの人。

たまには自分から誘ってくれても良いのに。

「だけど…結月君って奥手だもんなぁ」

家デートに誘ってみるにしても。

「来てくれるかは分からないわよ?ご自宅はちょっと…とか言うかも」

あの奥手な結月君のこと。

人様の家に上がり込むことに、尻込みするかもしれない。

うん、有り得る。

すると。

「それならそれで、別に良いんじゃない?誘ったけど、三珠クンが断ったから無理だった、って正樹に言えば?」

「あ、そっか…」

要するに「家デートに誘った」という事実が大事なのよね。

結月君が断るなら、それはそれで良いや。

ってか、断ってくれ。

多分結月君なら、断るんじゃないか?うん。そう思おう。

悪い人じゃないのは分かるけど、結月君がうちに上がるなんて。

絶対気まずいことになるのは、目に見えてるもの。

「家デート断られたら…代わりに別のところに行けば良いじゃん」

「別のところ、ねぇ…。今度は何処にしようかな…」

結月君は、お金がかかるデートは無理なんだよね。

となると、やっぱり外でのデートが多くなりがちだけど…。

そろそろ寒くなってきたし、出来ることなら、何でも良いから建物の中でデートしたい。
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