星と月と恋の話
「つまんないよねぇ、星ちゃん」

「え?」

唐突に、海咲にそう言われ。

私は思わず首を傾げてしまった。

「だって、三珠クン、貧乏なんでしょ?」

「それは…。…そうらしいけど」

結月君には金銭的な余裕がないらしくて、お金のかかるデートは無理なんだ、って。

真菜達にも話してある。愚痴と言うか、相談がてらに。

「高校生にもなって、貧乏デートは泣けるわ」

「本当ね。カラオケすら断られるんじゃ、何処に行けば良いのか分からないわ」

いや、カラオケを断ったのは、お金云々と言うより。

単に、結月君がカラオケで歌うような歌を知らないから、だと思うよ。

あの人にマイクを渡したら、国歌とか歌いそうだもん。

どうしよう。その姿が見えるわ。

「映画代すら払えないって言うんだもん。貧乏学生ここに極まれり、って感じ」

「星ちゃん、よく付き合ってられるね、偉い偉い」

「偉いも何も…そういう罰ゲームを提案したのはそっちでしょ…?」

私だって、好きで…。

好きで…結月君と付き合ってる訳じゃ…ないわよ。

罰ゲームだから、仕方なく…。

…。

「お金かけずに済むデートなんて、ほとんどないもんね」

「公園とか、広場とか?どっちにしてもつまんないわ」

「私だったら半日どころか、半時間も持たない」

そう言って、真菜と海咲はどっと笑った。

…笑い事ではないんだけど?

あんた達は、他人事だからそうやって笑えるのよ。

「まぁ、何か考えるわよ…。お金をかけないデートも、それはそれで楽しいわよ?」 

これまでの、自然公園でのデートとハイキングデートを思い出す。

ハイキングは…色々トラブルがあって大変だったけど、あれは私のせいだし。

そうだ。あのとき、結月君に散々お世話になったお礼。まだしてないよね。

ちゃんとしないと。

あ、そうだ。

あのときのお礼ってことで、カラオケ奢るよ、とかどう?

でも、私の奢りって言ったら結月君は嫌がるかな…。

「あなたが貧乏だって言うから、私がお金出してあげるよ」って言われてるのと同じだものね。

それって、何だか失礼なのでは?

でも、カラオケ代くらいなら良いか。

よし、今度カラオケにでも誘ってみよう。

…で、それはともかく。

その前に家デートなんだっけ。

家デートなら、お金も大してかからないか。

「ふーん?何だか星ちゃん、案外三珠クン…アリなの?」

海咲に、からかうようにして聞かれ。

私は目玉が飛び出るかと思った。

いきなり何を言い出すの、海咲は。

「な、何言ってるの?」

「だって星ちゃん、しょっちゅう三珠クンのこと擁護するじゃん」

「あ、それは分かる」

ちょっと。真菜まで。

「調理実習のときも、やけに親しい様子だったしね〜」

「あれは…普通に話してただけでしょ。同じグループなんだから。それに、結月君は料理が上手だから余計に…」

「そう?それにしては、べた褒めだったじゃん?」

それはしょうがないでしょ。

実際、褒めるところしかなかったじゃない。

皆して結月君に手伝ってもらっちゃって。

あんた達だって、散々結月君に助けられたじゃない。

どの口で言ってるのよ。
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