星と月と恋の話
不安を抱えつつ、週末を迎えた私は。

この間買ったばかりの、冬先取りワンピースを身に着け。

待ち合わせ場所に向かった。

片手には、手土産を持っている。

特に深い意味がある訳じゃなくて、お家にお邪魔するんだから、手土産必要かなー、というのと。

遅れ馳せながら、以前ハイキングデートで散々お世話になったお詫びと感謝を込めて。

私のお気に入りのお店で買った、アイシングクッキーの詰め合わせを持ってきた。

是非とも味わってみて欲しい一品。

すると。

「おはようございます」

「あ、結月君おはよー」

待ち合わせ場所には、既に結月君が待っていた。

必ず私より先に来て待ってるね、君は。

一体いつから待ってるのか、ちょっと心配になる。

私は当然、結月君の家が何処にあるのか知らないので。

待ち合わせ場所で合流してから、一緒に家まで向かうことになる。

「それで、結月君のお家は何処?ここから遠い?」

「歩いて15分くらいですかね。ここを真っ直ぐです」

「おっけー」

じゃ、いざ結月君の家に向かって、レッツゴー。

歩きながら、私はずっと気になっていたことを聞いてみた。

「ねぇ、結月君のお母さん、家にいるんだよね?」

「はい」

「…優しい?」

「…え?」

結月君はポカンとしてたけど。

重要なことなのよ。私にとっては。

「怖い?厳しい?」

「え、えーと…。どうでしょう…?」

何で首傾げるの。

ハッキリ言って良いのよ。いっそのこと。

「鬼ババみたいな人ですよ」とか。

いや、それはそれで私、今すぐ回れ右しようかしらと思うけど。

結月君の口から、そんな言葉が出てくることはないか。

「僕から見ると…優しいと思いますけど…」

「そ、そっか…」

まぁ、自分のお母さんを悪くは言わないわよね。

マザコン疑惑まで出てるんだから。

「でも、怒ると怖いかな…」

…マジ?

「そうなんだ…。じゃあ私、怒らせないようにしないといけないのね」

「いや、さすがに、よそのお嬢さんを叱り飛ばしはしないですから」

それなら良いんだけど。

「うちの息子とどういう関係よ!?」みたいな感じで、喧嘩腰だったら嫌だなって。

どういう関係って聞かれたら、何て答えれば良いの?

まさか、罰ゲームの関係ですとは言えないし…。

「大丈夫ですよ。取って食われたりしませんから…今日は特に…」

今日はって何?

日によって違いがあるの?

今日は凶暴な日です、とか?そんな天気予報みたいに?

分からない。結月君のお母さん、全然分からないよ。

少しでも事前情報を得て安心するつもりが。

余計分からなくなって、不安が募っただけ。
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